〈第60回 PT国試 午前14〉
56歳の男性.身長165cm,体重45kg.肺癌の外来化学療法の治療中であったが,1週間前から息苦しさがあり,呼吸困難が増悪したため緊急入院した.精査の結果,両肺の癌性胸膜炎と診断され,胸部単純CTで両側胸水を認めた.意識は清明.心拍数60/分,整.血圧102/78mmHg.呼吸数20/分.SpO₂95%(room air).痰の喀出量が多く,頻回に努力性の咳嗽が出現し,安静時でも呼吸困難を訴えている.理学療法の方針で適切なのはどれか.
1.背臥位をとらせる.
2.有酸素運動を行う.
3.理学療法は中止する.
4.ハフィングを指導する.
5.口すぼめ呼吸を指導する.
解答
1.× 両側胸水を認めており,背臥位は背部肺野の水分量増加,腹圧や心臓による肺野の圧迫により換気効率が低下するため適切でない.
2.× 安静時にも呼吸困難がある状態での有酸素運動は過負荷である.
3.× 呼吸理学療法は症状緩和と排痰のために有効である.
4.○ 正しい.
5.× 痰の喀出多量と努力性咳嗽に対し,口すぼめ呼吸の直接的効果は低い.
〈第51回 PT国試 午後19〉
69歳の男性.肺癌.これまで化学療法を行ったが病状は進行し,経過中に脳転移がみられた.胸部エックス線写真(A)と頭部造影MRI(B)とを示す.現在,呼吸に関する自覚症状はないが,全体倦怠感,食思不振および悪心があり,外出する気分になれず自宅に閉じこもる傾向にある.この時期に適切な理学療法はどれか.

2.下肢促通運動
3.屋外での歩行運動
4.軽打法による排痰
5.漸増的な持久性運動
解答
1.× 嚥下機能に問題がないため,嚥下練習は必要ない.
2.× 下肢の運動麻痺がないことから,下肢促通運動は必要ない.
3.○ 正しい.
4.× 呼吸に関する自覚症状がなく,胸部エックス線写真からも軽打法による排痰は必要ない.
5.× 全身倦怠感,食欲不振,悪心があることから,漸増的な持久性運動は過負荷である.